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2019年3月15日 (金)

あの日の夕方も寒かった

この時期になると思い出すことがある。

もう10年近く前のこと。

近くに買い物に行っていたカミサンからケータイに電話が入った。

「急いですぐ来て!バイクに乗っていて転倒したお年寄りがいるので。寒いので温かい

飲み物と冷凍庫にあるアンコの入ったお饅頭をレンジでチンして持ってきて!」と。

声の具合から事態は急を要していることがわかり、すぐ我が家から5分くらいの指定された

場所に急いで行った。

ボクより年上と思われる人が、寒さで震えながら石垣に腰かけていた。

カミサンが「救急車に電話したので間もなく来るはず」と。

おじさんは「救急車には乗りたくない」と。

傍にはおじさん(Kさん)が乗っていたミニバイクが倒れていた。

住所を聞いたら、うちから車で20分くらいのところにある市営住宅。

ご家族はと聞いたら「女房は亡くなった。息子がいる」とのこと。

バイクはエンジンはかかるので、Kさんが救急車で運ばれたあと動かして、我が家で

保管する旨Kさんに話し、あわせて息子さんの連絡先を聞いた。

間もなく来た救急車にKさんは乗り、ボクはバイクを押して我が家に持ち帰った。

家に帰りすぐKさんから連絡先を聞いた息子さんに電話し、お父さんがバイクで転倒し

救急車で病院に運ばれたこと、それとバイクを預かっているので、いつでもいいので

取りに来て欲しいと話した。

数日後だったろうか、静岡県の御殿場に住む息子さんより電話があり、我が家に来て

バイクを持ち帰った。

その後、何度か息子さんと電話で話し、お父さんの状態は大丈夫であることを聞き

お見舞いに行きたい旨を伝え、病院を教えてもらった。

後日、車で30分以上かかる市民病院へお見舞いに行った。

Kさんは恐縮しながら、当日の模様を話して下さった。

あわせてご家族についても。

息子さんがふたりいるが、仕事が忙しく家には寄りつかない。

奥さんは入水自殺し、今はひとりで生活していて、あの日は食料を買いに行く途中だった

ことなど、いろいろ話してくださった。

あの日、救急車を呼ぶことをKさんが嫌がったのは、息子に迷惑をかけたくない、余分な

お金がかかる病院には行かず、自分で何とか頑張りたいとの理由だったのだろうと思った。

今でもはっきり覚えていることがある。

バイクの転倒現場に行ったとき、石垣に腰かけていたKさんの着ていたジャンパーの

奥から小さな子供の話す声が聞こえた。

病院に見舞いに行ったとき、Kさんの話でその声のことがわかった。

ボタンを押すと子供の声が出る簡単なおもちゃがあって、Kさんはそのおもちゃの

ボタンを押していたのだった。

カミサンと話した。

「お孫さんたちに会えないので、あのおもちゃを肌身離さず持っていたんだね」

それから1年くらい経ったころ、息子さんが我が家を訪ねてこられた。

「父が亡くなりました。その節はいろいろありがとうございました」とのことだった。

「是非お墓参りをさせていただきたい。お墓はどこですか?」と聞くと、「市営の墓地に

母と一緒に入りました」

広い市営墓地の場所を教えてもらい、後日お花とお線香を持って墓参りをさせて

いただいた。

墓前ではいろいろ複雑な思いが頭をよぎった。

墓参りをさせてもらったのは、これが一度だけ。

ただ、寒いこの時期になり、Kさんが転倒していた場所を通ると、あの日のことを思い出す。

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